【9月22日 AFP】(訂正)極めてもろくなった状態の古代ヘブライ語の巻物をデジタル処理によって「開き」、史上最古級の旧約聖書写本の中身を明らかにしたとの研究論文が21日、発表された。
 米科学誌「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」に掲載された論文によると、「エン・ゲディ(Ein-Gedi)文書」として知られるこの巻物には、旧約聖書のレビ記(Leviticus)の文章が記されており、その年代は3~4世紀、もしくはさらに古い可能性もあるという。
 論文では、今回の巻物の解読を「聖書考古学における重大な発見」と表現している。
 これまでに発見された最古の旧約聖書写本は、紀元前3世紀から2世紀の間に書かれた文書が含まれる聖書写本群「死海文書(Dead Sea Scrolls)」とされている。
 エン・ゲディ文書の内容は長年、永遠に失われたと考えられてきた。6世紀に起きた火災で巻物が焼け、触れると崩れて灰の塊になってしまう状態となっていたためだ。
 エン・ゲディ文書の巻物は1970年、イスラエル・エン・ゲディにある、紀元前8世紀末から存在した大規模なユダヤ人集落の遺跡で、考古学者らによって発見された。巻物の断片は数十年間、イスラエル考古学庁(IAA)に保管されていた。
 その状態については、「触れるたびに粉々になってしまう炭の塊になっていた」と論文では説明された。そこで研究では、巻物を「バーチャル」に開き、書かれている内容を高性能のデジタルスキャンツールで調べた。マイクロCTスキャンでは、インクに含まれる金属の痕跡を見つけることができた。
 巻物がコンピューター上で開かれるまで、この遺物についてはトーラー(Torah、モーセ五書)の書全体である可能性もあると専門家らは考えていた。だが、スキャン画像を調べた結果、巻物はモーセ五書の三番目の書のレビ記であることが判明した。
 これによりエン・ゲディ文書は、ユダヤ・キリスト教教典の最初の五書に関連するモーセ五書の、これまでにユダヤ教会堂で発見された最古級の写本であることが分かった。レビ記については、より早い時代の証拠が、死海の北西にある洞窟の中から見つかった死海文書に存在しているという。

 
■瀬戸際から引き戻す
 研究について、イスラエル・ヘブライ大学(Hebrew University)哲学・宗教学部のマイケル・シーガル(Michael Segal)学部長は、「スキャン画像の画質の高さは目を見張るものだった」とコメント。「文字の読みやすさは、実物の無傷の死海文書もしくはその高解像度写真と同程度か、それに近かった」と説明した。
 巻物には、各段に18行の文章が書かれているが、当初の1段の長さは35行だった。また他の古代ヘブライ語の巻物と同様に、記されているのは子音のみで、母音は書かれていない。ヘブライ語に母音の記号が導入されたのは、9世紀になってからだ。
「これらの数節では、エン・ゲディ文書のレビ記が、ユダヤ教典の信頼できる原本とされている、いわゆる『マソラ本文(Masoretic Text)』」と、文字と節の分割の両方に関して、詳細のすべてが完全に一致していた。この事実にわれわれは驚いた」とシーガル氏は話している。
 研究チームは、エン・ゲディ文書を解読するために開発した技術が、現在まで未解読のままになっている死海文書群の一部を含む他の巻物に対しても使用できるのではと期待を寄せた。
 論文の共同執筆者で、米ケンタッキー大学(University of Kentucky)情報工学部の学部長のブレント・シールズ(Brent Seales)教授は「損傷と腐食は自然の摂理だが、テキストを消失の瀬戸際から完全に引き戻すことが可能な場合もある」と今回の研究についてコメントしている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN