フクシマ-最悪事故の陰に潜む真実 ・その二
(ガンダーセン氏)
これは4月初めに東電が公開したビデオです。
これでようやく4号機の燃料プールの様子を覗くことができました。
この画面がその中でも一番わかりやすい。
これは次のことを示しています。
床は大体、このくらいの高さまであったはずです。
蒸発と爆発により水量が減り、かなりダメージを受けて、床が落下しています。
ここら辺に核燃料が置かれています。
この緑の機械は、核燃料を移動するためのクレーンです。
しかしこのクレーンも破壊してしまい、今では燃料プールに入り込んでしまっているのです。
東電は、原子炉建屋と燃料プールに、上から水を入れるしかなくなった。
東電自身も事態をかなり深刻と判断し、爆発後、4号機の作業員は
全員避難を余儀なくされた。
その中で50人だけがここに残った。
これが、外国のジャーナリストから、フクシマ・フィフティと呼ばれるようになった勇敢な50人である。
東電は2011年の11月になって初めて、4号機で爆発があった事実を認めた。
しかしそれでもその水素ガスが燃料プールから、発生したものだとは認めようとしなかった。
というのも、それを認めてしまえば、燃料がしっかり冷却できなかったことを認めざるを得なくなるからだ。
それで彼らは、自分たちの解釈を説明した。
(アルバレス氏)
東電は4号機の爆発は水素爆発だった、
そしてその水素は、3号機と繋がっている共通の排気筒を通して、3号機から水素が4号機に流れ込み、爆発を起こした、と説明しています。
私自身は、この説明に信憑性があるとは思えません。
日本の東京大学の学者も、日本原子力研究開発機構も、この説を疑っている。
3号機の爆発が起きてから4号機の爆発まで、20時間も経っていることもそれでは説明がつかない。
(クロンプ氏)
2つ目の説があります。
これは、長くジェネラル・エレクトリック社に務め、スリーマイル島の事故があったときにも、事故の収束にたずさわっていたマイルスという、原子力エンジニアが主張している説ですが、彼や私の知っているエンジニアたちはこう解釈しています。
つまり、まず地震で燃料プールに亀裂が入り、水が流出してしまった。
それで、ウラン燃料の被膜をつくっているジルコニウムが、とても高い温度に達して自然に発火してしまった。
そのときに水素も同時に発生したために、爆発が起きた、というものです。
結果的に爆発は途方もない破壊をもたらした。
燃料プールには点検のため原子炉から取り出された燃料が入っていただけではなく、200本以上の燃料棒が入っている。
燃料プールに充分な水がなければ、これらは途方もない脅威を意味する。
東電は2012年1月にもまだ事態の過小評価を試みている。
東電のスポークスマンの主張は、世界の専門家たちによる原子炉画像のどんな分析にもあらゆる点で矛盾している。
(ひとすぎ よしみ氏)
燃料プールにはちゃんと水が入っていて、冷却がされていますし、燃料プールが大きく損傷しているということを示す兆候は確認されていません。
(ガンダーセン氏)
米国の原子力規制委員会は福島第一の4号機を一番危険なものと見なしています。
というのは、燃料プールがなんの保護もなく放置されていて、燃料棒が、いつ引火して火災を起こしておかしくないからです。
そのようなことが起きれば放射能と火災で20万人を超す人間が死亡することがありうると想定できました。
だから米国政府は、原発から半径100キロ圏内の住民に避難勧告を出したのです。
ワシントンにある原子力エネルギー協会は、米国の原子力ロビーを取り仕切る団体だ。
A. P. ヘイマー氏はここを代表する戦略家だ。
(ヘイマー氏)
米国の原子力規制委員会は、米国市民に対して、福島第一の最低半径50マイル圏内から離れるよう、勧告しました。
この勧告をするに至ったのには2つ理由があります。
1つ目は、日本に滞在する米国市民は外国人であり、現地の言葉をちゃんと理解できないことです。
このような災害が起きた時に、邪魔にならないよう退散していた方がよい、という判断です。
2つ目の、しかももっと適当だと思われる理由は、原子力規制委員会がワーストケース、つまり最悪の事態を分析したことにあります。
米国の原子力規制委員はワーストケースのシナリオを重要視した。
4号機の燃料プールに水がなくなる危険を重視した。
これは、官庁インターンの電子メール文書から明らかだ。
日本人はそうではないと主張しているが、アメリカではそれを疑っていることがここでわかる。
しかし、どうやらその最悪の事態は起きなかったようだ。
(ガンダーセン氏)
もし燃料棒が火災を起こしていれば、今頃日本ははっきり2つに分断されていることでしょう。
そうなれば50マイルほどの幅の地帯が日本を横断し、もう北から南へ行くことができなくなっていたでしょう。
東京から消防隊が現地に送られるまで、事故から1週間かかった。
菅首相自ら、その命令を下している。
まさに、決死隊だった。
(消防隊の隊長)当時
これは、もう黄泉の国かと思いましたね。
普通私たちが行く事故の場所とは違って、あそこではなんの音もなく森閑としていました。
怪我人も死亡者も誰もいない。
あそこに着いた時は正直言って、怖かったですね。
暗闇の中で、彼らはどう進むべきか計画を練った。
右も左もまったくわからない状態だった。
隊員たちは36時間休むことなく働き通しに働いた。
どこもかしこも瓦礫ばかりで、大きい車両は、海までたどり着けなかった。
それでも、なにがなんでも1号から4号機まで、水で冷却しなければいけなかった。
(消防員)
人力で200キロもあるポンプを海まで引っ張っていきました。
それから、原子炉のそばまで、かなり長いホースを引かなければだめでしたね。
(枝野官房長官)当時
現在、1号機から3号機まで消防隊により、海水が運ばれており、状態は安定しているとの報告が入ってきています。
(ザイデルベルガー氏)
あれは必死の試み、というものでしたね。
なんの水もほかになかった上、非常用の貯水もなかった。
それで仕方なく海水を使ったわけですが、先のことを考えなかったのか、あるいは知っていてなにもしなかったか知りませんが、海水というのは塩分が固まりになってそこら中にこびりつき、なにかをふさいだり沈殿したりします。
そしてその後、真水を使って放射能にまみれた塩の塊を洗い流し、今度は大量の放射能に汚染された水をまた海に流してしまったのです。
昼夜ひっきりなしに1~4号機まで放水が続けられた。
毎時ごと、放射能に汚染された水が、各ブロックでどんどん溜まっていった。
海江田経産相は、放射線量が高いので放水活動を中断せざるを得ない消防隊に向って、原発事故現場で放水を中断すれば処分する、と脅した。
それから2号機で2度、爆発が起きた。
これにより配管と外側の立て杭に亀裂が生じた。
その亀裂から放射能汚染水が漏れ出た。
亀裂をまずコンクリートで固めようとしたが失敗し、紙やおがくずなどで試みたのち、水ガラスを導入してどうにか亀裂を止めることができた。
大量に発生した放射能汚染水を東電にはもう処理することができなくなっていた。
(枝野官房長官)当時
放射性物質を含む水を海に放出する以外手立てがありません。
1万トンの高放射能汚染水が、その後太平洋に放出されることとなる。
それが世界の生態系にどのような影響をもたらすことになるのか、まだ誰にも評価できない。
(アルバレス氏)
海に放出された汚染水の量を査定すると、開始時点より3倍に増えているとする
報告が上がっています。
そして原子炉からずいぶん離れた場所でも高い放射線が、見つかっているということから、かなり高度の放射能が、放出されてしまったことがわかります。
私は、これまでの評価を訂正すべきだと思います。
数字はずっと高いものであるはずです。
(クロンプ氏)
海が今後どのような反応を起こすかについては、まだ答えは出ていません。世界初の実験であるわけで、これから判明していくことでしょう。
これほどの非常事態に対して、危機管理があまりにひどかった東電と政府だが、菅首相は7月にこのようなニュースを晴々と伝えた。
原発事故を収束するための第1ステップが、見事終了したというのだ。
「循環注水冷却システムができあがり、これからもステップ2終了に向け、努力を続けていく所存です。
いわゆる「冷温停止」が完成できるのは、2012年の初めと考えております。」
これはしかし、政治的な議事日程であって、絶え間なく続行する事故の現実とは無関係だ。
ここはウェールズ沿岸のアバリストウィス。
クリストファー・バスビー教授は、ここの大学で研究する放射性化学者だ。
彼はまた、独立した欧州放射線リスク委員会のメンバーでもある。
ここにはヨーロッパ各地からあらゆる専門家が所属している。
彼は、フクシマ近辺とその周辺で実際に、どの程度汚染が進んでいるか、調査し、住民にとってどれくらい危険があるか調べようとしている。
それで彼は、車のエアフィルターを日本から取り寄せた。
彼はその車が、事故直後からどこにあったかを、持ち主に細かく記録してもらった。
(バスビー教授)
フィルターを開けて、アルファ粒子を検出する装置に入れます。
まず24時間待たなければいけません。
アルファ粒子を放出する放射線は、人間の細胞に当たれば、極めて危険である。
(バスビー教授)
人々はこの放射能に当たるだけでなく、それを体内に吸い込みます。
環境にはウランやプルトニウムが大量に放出されていて、遺伝子を壊す、非常に危険な物質に満ちています。
ですから、地面にある放射能だけでも、大変怖れなければいけない。
それが空気にあれば、人々はそれを当然吸い込みます。
私は車のフィルターを測定しましたが、フィルターに溜まった同じものは人間が吸い込んでいるのです。
それが肺からリンパシステムに入れば病気になります。
7月には東京はいつもと同じ状況に戻った様子を見せていた。
しかし、放射能に汚染された牛のえさや緑茶、または米などがニュースとなった。
東電や政府の過小評価がどんどん信憑性を失っていく中でも、人々はあまり動揺しなかったように見られた。
同じ頃、バスビー教授は自分の最初の分析結果を手に、東京を訪れた。
分析結果はかなり不安を呼び起こすものだった。
車のフィルターから、セシウム430と137が発見されたからである。
セシウム137は、何百年にも渡って、放射能を出し続ける強い放射性物質である。
ノルウェーの研究者たちがその後、バスビー氏の分析結果を確認している。
(バスビー教授)
ということはかなりの量の放射線がすでに、放出されたということです。
福島からあれだけ離れた千葉などで、予測していた以上のものが発見されたわけですから。
これはまたウランやプルトニウムを含むその他の放射性物質が、かなり大きな距離にわたって拡散されたはずであることを
示す証拠ともいえます。
つまり、住民たちはかなりの被爆の危険にさらされているのです。
それは、核実験が世界で相次いだ1963年ごろ、測定された大気の放射能物質より、千葉では300倍も強く、100キロ圏以内ではなんと1000倍も強くなっています。